PGTの正確性・安全性 着床前検査

結果の正確性

当クリニックのPGTの精度は97%です。
受精卵の分割過程で、1つの胚盤胞に染色体情報の異なる細胞が混在するということが起こります。これを「モザイク」といいます。胚盤胞がモザイクならば検査した部分と、赤ちゃんになる部分の染色体情報が異なるという可能性があります。PGT検査後赤ちゃんになる部分の細胞に突然変異が起き、検査結果と赤ちゃんの染色体情報が変わってしまうという可能性も無いとは言い切れません。
また、PGTは、数個の細胞から取り出したDNAを何万倍にも増幅して検査します。DNAがきれいに抽出できなかったり、増幅の際にうまく増えなかったりする場合、正確な結果が出ないといったことが起こる可能性もあります。これらを合わせて、正確な診断とはならない確率が3%くらい存在すると考えています。
誤差3%と言っていますが、現在まで、当クリニックでPGT検査を受けて出産した赤ちゃんに染色体異常があった例は1件もありません。PGT検査後流産した赤ちゃんの染色体を調べた中にも検査結果が間違っていたという例はありません。

PGTの安全性

PGTは体外受精と全く同じ過程を経ますが、胚盤胞から細胞を取る胚生検の過程だけが異なります。
胚盤胞から胎盤になる部分の細胞(栄養外胚葉)を5個程度採取しても、生まれてくる赤ちゃんに影響が及ぶことはありません。1卵生の双生児の多くは胚盤胞まで育ってから半分に分かれて2人の元気な子が生まれるのですから、胚生検(バイオプシー)の技術が高ければ、将来胎盤になる部分の細胞を少しとっても大きな影響はありません。米国の無作為比較試験でも着床率、出産率にほとんど影響がないことが証明されています。
現在までに世界で何万人もの赤ちゃんがPGTを経て誕生していると推測されますが、診断を受けたことが原因でお子さまに精神発達、身体発達、運動機能などに異常が生じたとの報告はありません。
ですが、まだ歴史の浅い技術ですので、PGTを受けて誕生したお子さまに心配なことがありましたらいつでもご相談ください。

モザイクについて

PGTの結果がモザイクと判定されることがあります。
モザイクと判定された胚は、本来受精したときには染色体は正常だったのですが、その後の受精卵の分割の過程で、染色体の分け間違いが起き染色体異常となった細胞が混ざっているというものです。
もともと正常胚ですから、移植すれば、着床して元気な子が生まれる可能性は十分ある胚です。
PGTは将来胎盤になるところの細胞を調べていますので、そこには異常があっても赤ちゃんになる細胞に異常が無ければ健康な赤ちゃんが生まれるはずです。もしかして、赤ちゃんになる部分にも染色体異常を持つ細胞が存在していれば、赤ちゃんに障がいがでる可能性も無くはないということになります。
PGTの問題は、赤ちゃんになるところに異常があるのか無いのかはわからないということです。
染色体正常胚が見つかる可能性があるのならば、採卵を継続して正常胚を見つけることをお勧めします。しかしながら、PGTを受ける患者さまは高齢の方が多いので、移植可能胚はモザイクのみということもあります。モザイクを移植する場合には1個ずつのモザイクについて、危険度を評価して相談をさせていただいています。
当クリニックでも世界中の施設でも、今のところモザイク胚移植後に障がいのある子が生まれたという例は報告されていません。出生前検査で染色体の異常が検出された例も有りません。しかしながら危険性は否定できませんので、モザイクを移植する場合には、モザイクの移植について経験、知識のある遺伝の専門家による相談が非常に大切です。

赤ちゃんの病気の予防のためではありません

PGT後病気をもつお子さまが生まれる確率は、通常の妊娠時と同じです。通常赤ちゃんの2~5%は何らかの病気を持って生まれてきます。そのなかで、染色体の数の異常を原因とする病気はごくわずかです。大部分は染色体以外に原因があります。ですから、PGTで染色体の数を調べることによって生まれてくる赤ちゃんの病気の確率が下がるということはありません。
当クリニックでは、体外受精の成績を上げ、流産率を下げる目的でPGTを行っています。遺伝性の病気の予防のための検査は行っておりません。男女の産み分けについても行っていません。